春は旅立ちの時、大学生活に心弾ませている若い人たちも多いでしょう。
一方でいよいよ「お金」という現実世界に否応なしに目を向け始めるのもこの時期ですね。
その第一歩が、奨学金の申込みでしょうか。
と言ってもまだ高校生から大学生になろうとしている社会経験0の方たちですから、実際は親が申込みをするようになりますよね。
そこで問題になるのが、保証です。
保証には「人的保証」と「機関保証」の2種類がありますが、いったいどちらを選択すれば良いのでしょうか。
なお、ここでは日本学生支援機構の奨学金を対象にしています。
人的保証とは!?
・日本学生支援機構の奨学金の貸与を受けるにあたって、一定の条件にかなった連帯保証人(原則として父母またはこれに代わる人)及び保証人(原則として4親等以内の親族で本人及び連帯保証人と別生計の人)が保証する制度です。
・本人が奨学金の返還を延滞した場合、連帯保証人・保証人は本人に代わって返還をする義務があります。
・奨学生採用時に連帯保証人の「印鑑登録証明書」・「収入に関する証明書」と保証人の「印鑑登録証明書」が必要になります。
ここでのポイントは「連帯保証人」と「保証人」の二人が必用ということです。
通常、連帯保証人は親、保証人は叔父叔母などの親戚がなりますね。
そして、本人が奨学金の返還を延滞したとき、先に連帯保証人に請求が行きます。
その連帯保証人が支払えない場合、次に保証人に請求が行きます。
このように親なり親戚が本人に代わって奨学金の返還をしますよ、という保証が「人的保証」です。
あくまでも周囲の人間が保証するから「人的保証」なのですね。
ちなみに連帯保証人ではなく保証人が返還する場合、その金額は残債の1/2で良いことになっています。
これを「分別の利益」といいますが、日本学生支援機構に対して申し出をしないと利益を受けられません。
日本学生支援機構から「分別の利益」についてお知らせがあるわけではないのです。
このことを予め知っておく必用があるということですね。
さらにちなみに、もし保証人が残額を弁済した場合、保証人は奨学生本人や連帯保証人である親に対してその金額を請求できる「求償権」という権利を得ることになりますが、それは完全に民法の範疇であり機構としてはタッチしないようです。
(参考)
民法第459条第1項
保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、過失なく債権者に弁済をすべき旨の裁判の言渡しを受け、又は主たる債務者に代わって弁済をし、その他自己の財産をもって債務を消滅させるべき行為をしたときは、その保証人は、主たる債務者に対して求償権を有する。
機関保証とは!?
上記に対して「人」ではなく「機関」が保証してくれる制度が「機関保証」です。
読んで字の如しですが。
これは一定の保証料を支払うことで、奨学金の申込みができます。
・平成16年度以降の採用者で、機関保証制度の加入者を対象として、債務保証をします。
・機関保証制度加入者は、連帯保証人及び保証人は不要です。
・奨学生(返還者)が奨学金の返還を延滞した場合、日本学生支援機構の請求に基づき、保証機関が奨学生(返還者)に代わって残額を一括返済します。
その後、保証機関が奨学生(返還者)にその分の返済を請求します。
連帯保証人及び保証人は不要ですが、申し込みの際、連絡先の登録が必用です。
通常、親元ですね。
しかし、万が一本人が返還できなかった場合も親に弁済義務は発生しません。
そのための機関保証ですから。
機関保証を受ける場合、毎月一定額の保証金を支払うことになりますが、それは毎月の奨学金から天引きされて残りが振り込まれます。
保証金の額は月額64000円の奨学金に対して2666円です。(平成29年度、貸与月数48か月の場合)
では「機関保証」の「機関」とはどのような組織でしょうか。
それは
公益財団法人 日本国際教育支援協会 機関保証センター
と言います。
また、この機関が債権の回収を委託するのが、
アルファ債権回収株式会社
【債権管理回収業に関する特別措置法(平成10年法律第126号)に基づく債権回収会社として法務大臣の許可を受けている(法務大臣許可番号第101号)】
という会社です。
平たく言うと本人が支払えなくなったとき、この保証機関から日本学生支援機構に残債が一括して支払われますが、これで本人の返還義務が免除されるわけではありません。
今度は保証機関から委託を受けた債権回収会社から本人に督促されるようになります。
結論ー人的保証、機関保証どちらを選択すべきか!?
個人的には機関保証をお薦めします。
個人的にはと言いましたが、私がどういう「個人」かと申しますと、3人の子供を大学に進学させました。
3人とも機関保証で奨学金を借り無事卒業しました。
かわいい子供のことだから親が連帯保証人になってやるのは当然、機関保証にすれば月々保証料を取られるのだからその分奨学金が減ってかわいそう、という考え方もありますが、私は機関保証を選択しました。
その理由は、ひとつには人的保証にすれば私以外にもうひとり親戚の誰かに「保証人」を頼まなければならなかったからです。
人生、何が起こるかわかりません。
万が一のときに親戚に迷惑をかけるわけにはいきません。
そして、2つ目は奨学金は自分で返すものという自覚を持ってもらいたかったからです。
もちろん奨学金を申し込む際、説明会でそのことはくどいほど説明されるのですが、現代っ子のことですから「そうは言っても親が何とかしてくれるだろう」などと甘い考えを持たないとも限りません。
ですから最初から機関保証にして親には返還義務はないのだから、将来きちんと働いて自分で返していくのだぞというこちらの意思表示をしました。
そして最後の理由として、やはり何があるかわからないという漠然とした恐れがありました。
万一、子供自身が働けなくなったとき自分が肩代わりできるのかと考えたら、その頃は自分も定年退職後であろうし妻との老後の生活を考えるととても子供の奨学金を返還する余裕はないだろうと予想されました。
それらの理由で機関保証を選択したのですが、間違いではなかったと思っています。
実際ここ数年、奨学金が返還できないというケースが社会問題化しています。
連帯保証人になっていた親も払えず、保証人になっていた親戚に支払請求が行き、途方に暮れながらも全額弁済したら、後に実は半額で良かったのだという話もありました。
先ほどの「分別の利益」ですね。
このように後々に不幸がもたらされる要因があるのなら機関保証を選ぶべきだと考えます。
万が一、返還が難しい事態になったときの対処法を別記事で書いていますのでよろしければ参考になさってください。
言うまでもなく奨学金は学生を支えるためのシステムです。
その奨学金に将来苦しめられることのないよう万全を期して臨みたいものですね。