2018年4月TBSドラマで「ブラックペアン」が放送されました。
嵐の二宮和也さんが主演でとても興味深いドラマでした。
二宮和也さんと言えば演技力に定評があり、嵐の中でも最も俳優に適しているとの定評がありますね。
今回のヒールな役どころをどう表現していくのか楽しみなところです。
ところでペアンって何でしょう。
手術器具のひとつでハサミのような形をした止血用鉗子(かんし)のことです。
それがこの物語の重大なキーワードになっています。
二宮和也さん演ずる主人公がヒールであることを暗示しているのか、はたまたそれ以上に深い意味があるのか、ブラックペアン、気になるキーワードです。
それを念頭に今後のドラマを見ると作者の意図にハッとさせられること請け合いですね。
原点は「チームバチスタの栄光」
やはり海堂作品の原点と言えば「チームバチスタの栄光」でしょう。
今回の「ブラックペアン」は時系列的に言えば「チームバチスタの栄光」から遡ること約25年前というところでしょうか。
しかし、その点はあまり気にせず今回の作品を楽しんだ方が良いかと思います。
「チームバチスタの栄光」は小説を読んだ方もドラマを見た方も多いのではないでしょうか。
医療ミステリーですね。
専門的な医学用語も頻繁に出てきて、素人には難しいながらもとても新鮮で興味深く作品に入り込んでいける作りになっていました。
登場人物のキャラクターにも特徴があり、愁訴外来(通称グチ外来)の田口医師、ドラマでは伊藤淳史さんが、映画では女性の設定になり竹内結子さんが演じていました。
内科や外科からは一段も二段も低く見られ、自分自身でさえも自らの職責に疑問を感じてしまうような気の弱さを持ち合わせた医師です。
その人の好さに付け込むようにヅカヅカと入り込んで、院内をかき乱していく厚生労働省のお役人白鳥圭輔にはテレビドラマでは仲村トオルさん、映画では阿部寛さんが扮していました。
どちらもうまかったですね。
私としてははテレビドラマでの仲村トオルさんが一層の嫌な奴を演じきったという感じで賞賛の一票を送りたい気がします。
ジェネラルルージュ以前の逸作
海堂氏の医療ミステリーの中でも人気が高いのがジェネラルルージュシリーズですね。
「ジェネラルルージュの伝説」「ジェネラルルージュの凱旋」での速水医師はその強靭な精神力、医師としての使命感、組織におもねない性格、孤高感で読者に強烈な印象を与えます。
その速水医師も登場する「ナイチンゲールの沈黙」という作品があります。
一度テレビドラマとして放送されていましたね。
しかし、設定やストーリーが原作とはかなり違っていたように思われます。
原作では天使の歌声を持つナースが主人公となります。
小児病棟に入院する網膜芽腫(眼の癌)の子供たちのうちのひとり、ニヒルな性格でナースたちにも一目置かれている少年の父親がある日、住居であるアパートで殺されます。
病棟では新たな問題が発生し、解決に田口が駆り出されます。
そこへなぜか厚生労働省の白鳥も登場して、病院内の不可解なな事件、少年の父親が殺された事件、両方を無理やりこじつけて解決を図ろうとします。
やがてそれが無理なこじつけではないことが証明されだす・・・というチームバチスタの名コンビを復活させたストーリーとなっています。
もちろん医療用語や病院内でのやりとり、医師やナースたちの葛藤や複雑な人間関係を描きながら存分に医療の世界を私たちに目撃させるという緻密な作品に仕上がっています。
海堂作品を読む順番
これらを発売順に読むもよし、時系列を意識しながら古い順番に読むのも一興ではあります。
ちなみにこの「ナイチンゲールの沈黙」にものちに活躍する速水医師や螺鈿迷宮に登場する桜宮巌夫も顔を見せます。
海堂作品は今のところ、すべての作品が何らかのつながりを持ち登場人物も重なることが多いので読むなら一気読みが楽しいかもしれません。
常に登場人物があの作品ではチョイ役だったとか、この人は前の作品で犯人扱いされてた人だとかを意識していると何倍も作品を楽しむことができます。
それにしても海堂氏の医療ミステリーは引き込まれるものがありますね。
今後も魅力ある作品を創り出し続けていただきたいと思います。
繰り返しになりますが「ブラックペアン」も面白い作品でした。
二宮和也さん演じる渡海征司郎はどことなく速水医師に通ずるものがあり、とても魅力的なキャラクターになっていると思います。