「ビター・ブラッド」雫井脩介
雫井脩介氏は1968年生まれ、愛知県出身です。
専修大学文学部卒。
2000年に「栄光一途」でデビューされました。
その精緻なプロットで構成されるストーリー展開は隙がなく読むものを飽きさせません。
【出だしのあらすじ】
新米刑事の佐原夏輝が配属されたのは刑事一課でした。そこには幼いころに別れた父親がベテラン刑事として勤務していました。
父親に対して軽蔑の念こそ持ちすれ、父としても先輩刑事としても尊敬の念などかけらも持ち合わせていない夏輝でした。
しかし、何の因果か父親とコンビを組まされることになり夏輝は何とも言えない鬱屈した気分で仕事に当たっていました。
ある日、あろうことか夏輝たちの同僚の係長が殺害されるという驚愕の事件が起こります。
捜査を進めていくうち、刑事の各人が何やら秘密めいたものを内に秘めていることが徐々に明らかになります。
夏輝の父親も例外ではなく、情報屋との不適切な関わり、過去の事件の秘密など刑事としても人間としても父親に対する不信感はますます募るばかりです。
互いが互いを牽制しあう捜査の過程でついに内部犯行説も浮上します。
夏輝は相棒である父親とも一線を画し、独自に捜査を進めます。
時に危険な目に遭いながらもやがて事件の核心に迫ろうとします。
【読後感】
血は争えない、ということでしょうか。
主人公は忌み嫌いながらも父親の背を追うように刑事の道を進みます。
この父親がユニークな存在で、妻と子供を見捨てたのか、逆に見捨てられたのか判然としないまま物語は展開していきます。
その独自の生活スタイルからニヒル、ダンディとの印象を受けますが、肝心なところで足がつって動けなくなるところがズッコケだったりします。
距離を置きつつも徐々に刑事としての父親に尊敬の念を向ける主人公の心根にも安心感を覚えます。
事件そのものが、誰が誰を欺こうとしているのか、誰が嘘をついているのかなど最後まで展開を読ませない複雑さを構成していますので非常に読み応えがあります。
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