法律に問う&もしも自分ならと考えてしまう衝撃の小説「さまよう刃(東野圭吾)」
読んだ後にスッキリしなかったり、なんでそんなラストなんだ?とモヤっとしてしまう小説はたくさんあります。
しかし、東野圭吾の「さまよう刃」は読んだ後に衝撃で見動きが取れないぐらい凄まじい破壊力を持つ作品でした。
モヤっとしながら、これでいいのか?でもこれで当たり前じゃないかと、ラストに納得できない自分をなだめるのは初めてでした。
さまよう刃のあらすじ
主人公は1人の中年男です。
長峰と言う名で、妻を亡くしています。
1人娘は高校生です。射撃が得意でした。
ある日、花火大会の帰りに長峰の娘が酷い犯罪に遭って亡くなります。
犯人は不良少年達であり、今までに女性を襲う犯罪を繰り返しています。
長峰はその少年達が犯人だと知り、1人娘を失った復讐をしようと決意します。
さまよう刃の読みどころと感想
あらすじだけ書いたとしても、ふーんぐらいしか思わないでしょう。
だけど、娘を犯罪被害で失い、犯人に復讐しようと決意する時の父親は相当な気迫があります。
妻も娘も亡くなり、守るべき者がなくなった時の自分って想像できますか?
しかも娘を手に掛けた犯人は極悪で、少年だから少年法が適用されてのうのうと生きていける訳ですよね。
父親の気持ちに感情移入してしまいます。
しかも、こういった少年が犯す凶悪事件は現実にもたくさんありますよね。
度が過ぎたいじめで死に至らしめてしまった場合などもあり、世間に訴えかける小説でもあるのです。
また、その父親が復讐の過程で出会った人々から与えられる気持ちにより自分の気持ちにも変化があったり、警察の正義なども見所です。
全部が見所って言ってもいいぐらいです。
この小説は映画で実写されてるので、映画を見るとさらに父親の悲しさや警察の揺れ動きなどが分かります。
ちなみに、ネタバレになってしまうので結末は書きませんが、映画と小説はラストが違います。私は小説のラストの方が好きです。
映画だと、はぁ?っと期待ハズレのラストです。
まぁ、こんなラストもありかな?と思う人もいるでしょうが、私は小説の方が人間らしくて好きなラストです。
さまよう刃とは、父親の復讐する気持ち、警察の正義を貫く気持ち、密告者のバレないか心配する気持ち、長峰と会ったペンションの人の気持ちなど、登場人物全ての事です。
人間って、誰かに影響されながら生きて行くんだなと感じます。
正義一直線の人なんかいる訳でなく、さまよいながら自分がすべき事を見つけていくのだと思いました。
泣ける小説であり、考えさせる小説でもあります。
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